研究テーマ

  1. 医療薬学的検証による調剤工程の確立
  2. 適正な散剤調剤の確立のための医療薬学的研究
  3. 医薬品に起因した医療事故の発生要因の解析と具体的対策に関する研究
  4. 多変量解析の手法を用いた医薬品の評価に関する研究
  5. テキストマイニングの手法を用いた調査解析に関する研究

中村教授による研究室紹介

 −臨床現場が求める良質な薬剤師の育成を目指して−

日本病院薬剤師会雑誌 Vol.47. No.1. 2011

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はじめに

 日本大学(以下、本学)は、1889年に時の司法大臣山田顕義先生が日本法律学校として設立され、以来122年目を迎えた。本学には14学部、1通信教育学部があり、総合大学の特色を生かした教育・研究活動を行っている。特に、医療系の学部として、医学部・歯学部・松戸歯学部・生物資源科学部獣医学科と薬学部(以下、本学部)が連携を積極的に進めている。さらに、医療機器の研究に取組む理工学部、生産工学部、工学部などとの幅広い研究交流や本学付属の研究機関との連携も深め、先端分野の独自色あふれる研究を行っている。
 本学部は1952年に工学部の6番目の学科としてスタートし、以後、理工学部薬学科となり、1989年に薬学部へと組織を変えながら発展し、今日に至っている。本学部は創設58年の実績と総合大学の薬学部であるメリットを生かし、「人類の保健、医療及び福祉に貢献する新しい薬学を創造する」という教育理念の下、高度医療社会のニーズに応える医療薬学に重点を置いた個性的な教育・研究を推進し、高い専門性と技術を備え、人の健康と医療の向上に貢献できる人材育成を目的にしており、薬剤師養成のための六年制学部(定員240名)のみである。薬剤師養成のための6年制薬学教育は、「臨床に係わる実践的な能力を培う」という目的から、実務実習教育の充実及び改善が求められている。本学部においても、2007年に模擬調剤室、注射薬の計数・計量調剤室、模擬病棟など、臨床現場に即した実務実習室が完成し、4年次の事前学習、OSCEやオープンキャンパスの体験実習などに使用されている。
 また、4年次の7月には、医療薬学系、基礎薬学系、教養系に大別される29の研究ユニット(研究室)から、卒業研究のための所属ユニットが決定される。

ユニットの概要

 病院薬学ユニットは、2006年から開始された薬学教育六年制を念頭に、薬剤師教育の充実・強化を図るために2005年4月に新設されたユニットであり、私が初代教授として、30余年の病院薬剤師から母校である本学部に異動した。卒業研究に当ユニットを希望する学生のほとんどが病院薬剤師あるいは保険薬局薬剤師として臨床現場での活躍を目指しており、当ユニットから臨床現場で評価される良質な薬剤師を一人でも多く育成することが使命であり、責務と考えている。
 病院薬学ユニットは、医療人としての倫理観、責任感を養い、医療現場における薬剤師業務に必須な知識、技能及び態度を習得させ、21世紀の高度・多様化する医療に貢献できる薬剤師となるための実践的な教育、研究を行なっている。特に薬剤師の本務である調剤に関しては、薬学・医学的根拠に基づき体系的に学び、患者の病態、体質、社会的環境などの患者背景が把握できる、処方が評価できる、正確に薬剤の調製ができる、適正使用のための情報提供ができる、患者に施行された薬物療法の有効性と安全性が評価できる、集積したデータを解析し臨床に還元できるなど、実践薬学の能力を育成している。さらに、近年、多発している医療事故事例を薬学的観点から分析、考察し、医療事故防止の対策を考え、医療におけるセーフティマネージャーとして活躍できる薬剤師の育成を目指している。
 当ユニットの現況は、教授1名、専任講師1名、大学院生1名(修士2年)、5年生8名、4年生7名である。卒業研究ユニットへの学生の配属は、原則として教員1名に対して4名となっているために、毎年、当ユニットを希望する学生が定員をオーバーし、選考に苦慮している。2006年に初めて四年制の4年生4名が配属された。現在、この第1期生全員が病院薬剤師として勤務している。2007年には、専任講師1名が加わり、学生8名が配属さた。同時に大学院生が4年生から2名、社会人から2名が加わり、ようやく研究室の雰囲気がでてきた。2008年には、大学院生が11名となり、学部学生より多いというねじれ現象が起きてしまった。これらの大学院生も前期課程修了後、全員が病院薬剤師として活躍している。

研究内容

 当ユニットの研究は、薬剤師業務の質向上や新たな業務展開などに関する問題をテーマとして抽出し、得られたデータから統計的手法を用い、その要因などを探索・解析し、新知見を見出すことを目標としている。研究テーマは、薬学教育・実務実習事前学習から薬剤師業務に関することまで、幅広い分野にわたっており、臨床現場や病院薬剤師会との共同研究が多くみられるのも当ユニットの研究の特徴である。
 また、大学院生には、前期課程修了までに最低1回の学会発表と学術論文の作成を義務付けている。なお、在学中の修士2年1名についても、「誤嚥性肺炎パスの作成を目的にした院内データの活用法についての考察」というテーマで、総合高津中央病院薬剤部(神奈川県)と共同研究を行っている。2010年3月に日本薬学会第130年会(岡山)で発表した医療施設との共同研究のテーマを次に示す。これらの共同研究については学術論文として投稿中である。

  1. CHOP療法施行時における発熱性好中球減少症の発症に影響する因子探索
     −国立がんセンター東病院薬剤部
     (ハイライトに選択され、発表内容の概要をリライトし掲載された)
  2. 漢方薬治療による不妊症治療患者の不定愁訴の改善と証との関連性
     −済生会横浜市東部病院薬剤部他
  3. ペグインターフェロン・リバビリン併用療法における血小板減少に起因した治療中断を回避するための血小板減少の最低値予測
     −日本大学医学部付属板橋病院薬剤部他
  4. 品質管理(QC)手法を取り入れたリスクマネジメント教育の実践
     −総合病院国保旭中央病院他

 さらに、高機能患者シミュレータを全国に先駆けて導入し、ベッドサイド実習に採り入れていた九州保健福祉大学薬学部を2007年に見学させていただいたのを機会に、薬剤師業務の新たな展開に関する研究において、当ユニットと同大薬学部・高村徳人教授、徳永 仁准教授のグループとの連携が始り、その成果を徳永准教授、瀬戸口氏らが「医療薬学」に発表している。
 昨年9月に開催された日本社会薬学会第29年会(2010年9月4〜5日、千葉)では、卒業研究についた薬学教育六年制第1期生である5年生4名が、これまでの調査データを新たな方向から解析・検討を加えた結果、新知見が得られたので、早速ポスター発表をさせた。文献調査、データ解析、要旨作成、プレゼンテーションの練習などと、手取り足取りで指導する我々の負担も大きかったが、発表時に参加者からの質疑に緊張しながらも懸命に対応している姿が初々しく、また頼もしくも見えた。

おわりに

 これからも、国民が求める、臨床現場で評価される、良質な薬剤師を一人でも多く育成することが、私の責務であり、お世話になった臨床現場に少しでも恩返しをしたいと考えている。

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